須通り
Sudo Masaaki official site
For the reinstatement of
population ecology.

ホーム | お問い合わせはこちらへ

 

     

(2022.08.23) 文中で LALA ガーデンの話をしているが、実は 2022 年 10 月で営業を終了することが判明した。ああ!!可哀想なつくば市民!!

ホーム | 雑記トップ | 生態学者がつくばの都市計画を再考してみた(2020年12月11日初版公開)

ご存知の通り筆者は元つくば市民であり、現職場の本部がつくばに所在しているため(コロナが流行る前は)年に数回は訪問・滞在している。今後の人事異動次第で、再び住む可能性も皆無ではない。要するに市政に関しては、それなりのステークホルダーを自認する一人である。

つくば市のウェブサイトに【資料2】つくば中心市街地における取組状況について (PDF 2.2MB)という資料が上がっていた。つくば市をそれほど愛していないが関わらざるを得ない一人の元市民として、都市計画を再考したい。

なお本稿の初版は 2020 年 12 月 11 日に公開された。以下、加筆部分については冒頭に(日付)が付いたパラグラフという形で書き込む。

総論

冒頭の資料を見ると公園や広場の整備でお茶を濁したがっているようだが、焼け石に水である。都市として、街区の設計そのものに無理があるからだ。

つくばという街の構造的な問題を以下に述べる。

  1. 街区の1ブロックが大きすぎる
  2. 市街地および集落が分散しており、公共交通機関の費用対効果が低い
  3. センターと研究学園に公共施設が分散しており、シナジー効果が得られない
  4. TX が旧市街地と有機的に結合していない
  5. 教育研究機関が鉄道駅から離れすぎている
  6. ナイトライフの欠如
  7. センターに昼間人口を確保できる事業所がない
  8. 東西方向の自動車交通の脆弱さ

街区の1ブロックが大きすぎる

個人的に、最も致命的な欠陥だと思っている。1ブロックが大きすぎると、小規模な店舗が立地しづらくなる。小規模店舗の間口に合わせてブロック内の土地を分割した際に、中央部がデッドスペースになってしまうためである。歩行者にとっては、歩行距離あたりの店舗数が少なくなり、街歩きの効率が著しく低下することを意味する。ショッピングの効率が悪い場所へは客も来たがらないため、いつまで経っても中心部に商店街が発達しない。

市街地および集落が分散しており、公共交通機関の費用対効果が低い

これは、関東平野という地形そのものが影響しているため是正が困難である。平野と付くが真っ平らではなく、河岸段丘や支流の谷筋に沿って、毛細血管のように街道や小集落が張り巡らされている。そのせいで、バス路線を1本通せば沿線人口をカヴァーできる、といった単純な構図にならない。北関東の交通弱者を完全に救済しようと思えば、自動運転車による無人配車サービスでも作らない限り難しいのではないか。

センターと研究学園に公共施設が分散しており、シナジー効果が得られない

つくば市役所が研究学園側に建ってしまい(本当に馬鹿なことをしたものだ)、センターと研究学園に主要施設が分散したことは、市政における拭いがたい汚点だ。現在の20〜30万人規模の都市のまま商業地区を発展させようとすると、この分散は致命的である。もし下で書くように、センター側に首都機能を移転できれば、研究学園や万博記念公園といった隣駅を徹底的にベッドタウンと位置づけ、マンションや学童・老人向け施設を集積させることで、市街地を上手く分業させつつ発展可能である。

TX が旧市街地と有機的に結合していない

教育研究機関に務めたり通学したりする人間の多くは、地元出身ではなく、しかも年限を区切って居住する。従ってマイカーの普及率は(特に常勤職に就いていない若者では)低い。筆者の観測範囲のポスドクにおいては、つくば赴任が決まった段階でまず「職住近接」かつ「駅チカ」のアパートを探そうとする。殆どの場合、この要望は叶えられない。仕方ないのでセンター周辺で部屋を探すか、職場から自転車で通える範囲(たとえば農研機構だったら観音台、高野台)のアパートを無理やり見つけるか、中間地点のバスの結節点(上横場あたり:ただし物件が少ない)に住むことになる。

すなわち、住む場所と働く場所のミスマッチがどうしても避けられない状況が慢性的に生み出されている。それもこれも TX が、東京のベッドタウン開発を主軸に置いたあまり、つくばの街作りを完全に無視して無人地帯に線路を通してしまったせいである。

個人的には、つくば市がフルコントロールできる事業としてもう一本鉄道を通すべきだと考える。明らかに足りていないのは、公共交通機関による市の南北軸であるから、以前から度々提唱されているようにライトレールを作る。バスではなく「鉄道」なのが肝である。バス停は人が長時間滞在する構造になっておらず、住民が集まる核とならず、駅前が発展しないためだ。

つくば LRT が絶対通るべき場所として、センターと筑波大が挙げられる。さらには常磐線との結節点として、荒川沖もしくは牛久をターミナルとする。沿線の事業所や大規模店舗として、センター以南だと産総研、JAXA、国環研、農林団地、イオンモール、森林総研等が挙げられるので、これらの各機関が徒歩圏内になるよう駅を整備する。センター付近の主要施設を網羅するには、TXつくば駅前から東大通りと西大通りの中間を南下し、洞峰公園東、赤塚公園、イオンモール、高野台、畜草研、森林総研を経由して牛久駅に直結する。

教育研究機関が鉄道駅から離れすぎている

すでに TX が既存市街地を迂回するように敷かれてしまったので、上で述べた LRT 以外に地方行政が打てる、抜本的な交通施策はあまりない。あえて述べるならば、TXの最寄り駅と各研究機関を連結するように幹線道路を拡幅、移設し、間の市街地化を促す程度であろう。

農林団地とみどりの駅の間を例に取ると、既存の国道 354 号線は狭い上に拡幅が容易でない。そこで、みどりの駅から南側に緩やかに迂回させて農林団地の中央(稲荷川付近)を通過し、イオンモールをかすめて荒川沖方面の水戸街道ないし牛久土浦バイパスへ合流するよう付け替える。道幅は最初から 2 + 3 車線を確保しておく。ただし車のスピードがあまり上がらないよう、敢えて線形を蛇行させる。実のところすでに茨城県道19号取手つくば線が、みどりの駅から農林団地手前(若栗集落)まで存在するので、こいつを拡幅・延伸すればいい。

ここにバス路線を走らせる。現在みどりの駅と農林団地を繋いでいるバスは盲腸線になっているので、みどりのー農林団地ー高野台ーイオンモールー荒川沖線として運用する。

交通需要の洗い出し

バスに関して言えば、つくばエリア全体でそもそも路線の設計が洗練されておらず、住民の潜在的需要を読み違えている。少なくとも全市的な(できれば牛久、阿見、常総、土浦の住民に対しても連動して)アンケートを行い、交通の需要について調査すべきである。この際、少なくとも

  1. 自分と家族が現在住んでいる場所
  2. 現在の場所に今後住み続けるであろう年数
  3. (交通ではなく住宅供給だが)賃貸物件が見つかるならば、本当はどの地区に住みたいか
  4. 所持・あるいは利用している交通手段
  5. 現在日常的に通っている場所
  6. 現在交通手段がなく通えないが、本当は通いたい場所(具体的な地名でもいいし、漠然とした用事、たとえば本屋とかプールとか居酒屋とかでもいい)
  7. 公共交通機関の使い勝手は良いか
  8. 使い勝手が悪いとしたら、路線・運賃・ダイヤ(運行間隔、始発、終発)がどのように改善されれば利用するか

について質問すべきである。後半の質問は、つくば市や関東交通といった事業者が見落としているかもしれない潜在的需要の掘り起こしである。どうも筆者が思うに、北関東の住民は端から「バスはめったに来ないもの」と諦めているフシがある。路線の運行間隔が短くなれば動線自体が変わり、バス路線沿いに経済需要が喚起されるはずだ。

たとえば筆者はつくば在住時、農林団地の近くにアパートを借りていたが、最も困ったのは終バスが早すぎることだった。セミナーで東大に行ったり、渋谷で知り合いに会ったり、秋葉原で買い物したりしてみどりの駅まで戻って来ると、20時台には終バスになってしまう。土日は驚きの19時台である。仕方ないので駅までは原付で通うことになる。これでは酒も飲めない。また服や雑貨を買おうと思っても、農林団地からイオンモール方面へはバスがない。つくバス南部シャトルはLALAガーデン付近にバス停がなく、結局センターまで乗る(しかもセンターは店がどんどん減少している)か、原付を何キロも運転して店へ通わざるを得なくなる。これでは酒も飲めない。忘年会も近くに店がないから、センターまで原付で通ったものである。おかげで、つくばのポスドク3年間ですっかり下戸体質になってしまった。

要するに、つくばセンターにまともに商業施設が根付かない一因には、後背地に人口を抱えていても気軽に遊びに行けないせいである。大学生やポスドクを大量に抱えているのに、いわゆる学生街が発達しないのは、そもそも研究所や学校が分散しており、一箇所へ集まる機会もないためだ。個人的には、ある程度強権を発動してでもセンターへ研究機関を再移転すべきだと考えている。たとえば農林団地は産総研やJAXA、国環研といった他の独法から離れすぎており、バス便や賃貸のストックといったインフラを共有できていない。また他機関の研究者と気軽に集まって、研究集会やコンパを開くにもハードルが高い。

本体移転が無理ならばせめて各機関が資金を分担拠出して、一般職員やポスドク、パートといった人々が滞在・仮眠・駐車・駐輪したり、軽食や会議を持ったりできるラウンジをつくば駅前に作って欲しいものだ。これは関東以外の拠点から出張に来る職員にも利益のある話であり、特に長距離バスや飛行機を利用する際、センターで時間調整が出来るとありがたい。eduroam が使えるとなお良い。

ナイトライフの欠如

お酒を飲んでから帰りの足が無いことが問題であれば、帰らなくてもいい遊興施設を用意する手もある。当然の発想だ。このためには、研究学園側に住宅や学校を集め、逆にセンターは徹底して享楽の街と化する。竹園東公園はソドム公園、竹園西公園はゴモラ公園に改称する。既に街の入り口には塩の柱があるのだから、大して難しくはない。

センターに昼間人口を確保できる事業所がない

つくばセンターという地区の産業構造上の特徴が、交通の結節点であり多数の事業所とバスで繋がっているが、センター自体には働く場所がないことである。そのせいで、バスや LRT をよほど強化しない限り商業施設が空洞化するのは、ある意味当たり前ともいえる。

個人的には、農水省や経産省、国土交通省、環境省といった、つくばに研究所を有する幾つかの中央省庁については、本省庁舎をセンター北の公務員宿舎跡へ移転すべきと考える。東京への接続が容易かつ、地盤がそれなりに強くて津波・洪水の心配もなく、まとまった公有地が存在する場所としてうってつけである。また数万人規模の昼間人口が確保できるため、商業施設のテナントを格段に誘致しやすくなる。

何より、最初に述べた「街区の1ブロックが大きすぎて個人商店が入れない」という欠点が、センター北側を官庁街に、南側を商業ビルゾーンに振り分けることで、一気に解決する。個人商店には大きすぎるブロックだが、高層ビルの建ぺい率を考えると適したサイズだからである。

東西方向の自動車交通の脆弱さ

南北方向には東大通、西大通り、サイエンス大通りといった、車線数が多くて街の北から南まで繋がった道路が数本走っている。一方、つくば市街地を東西に横断できる幹線道路は南の国道354号線、センター付近の土浦学園通り、北の藤沢豊里線と平塚通りだけである。しかも国道354号線は榎戸付近を中心に狭小区間が続いており、市内の通勤はもとより常総方面から土浦・水戸への交通を捌ききれていない。

これらの幹線の間にも太い道路がないわけではないのだが、途中で行き止まり、あるいは狭小な生活道路に接続したり、南北方面の道路の間をあみだくじ状に通していたりしている。これでは、渋滞や生活道路への車の流入を却って促進してしまう。

まずは土地収用を進めて、これらの盲腸のような未成線を通すべきである。特に R354 の拡幅を進めると共に、牛久土浦バイパスの土浦方面(土浦バイパス)、みどりの駅および水海道方面への延伸を早急に行い、つくば市南側の東西メイン道路をそちらに付け替える。